今日の午後はオフになったので、渋谷のシネマライズに行って、「秒速5センチメートル」を見た。
新海誠監督といえば、「ほしのこえ」や、「雲のむこう、約束の場所」で見せた美麗な背景画で有名である。
「雲のむこう〜」は、映画館で結局2回見たが、言葉で言い表せないような衝撃を受けたことを今でも覚えている。
さて、本作は全3話構成、60分の作品である。
ストーリーは、何一つ変わったことのない、ごくありふれたものである。何の変哲もない少年少女の淡い恋愛模様を描いている。
もちろんこの作品に巨大ロボットや宇宙人来襲や、魔法少女を求めているわけではなく、そもそも新海作品のストーリーを評価対象にすることすらナンセンスに思えてくる。
新海監督は映像作家を名乗っているが、それは「何を表現するか」ではなく、「如何に表現するか」という、作るものの方向性を表しているともいえるのではないか。
新海監督の手にかかると、何の変哲もない日常が、見る者に異様な現実感を伴って押し寄せてくる。ただただ美しい背景画も、ちょっと拙い声優(と言っていいのだろうか…)の演技も、天門氏による美しいBGMも、すべてが、目の前の世界を構成する要素としてこちらに強くその存在を主張する。
ラストは、見るものによってそれぞれ違う結論を抱くだろう。私は正直、あまりにも救われないタカキに同情さえ覚えたが。
唐突に迎える結末、そして館内が明るくなっても、なかなか現実の世界に帰って来ることができなかった。それほどまでに、この新海ワールドは美しく儚く、現実と同じかそれ以上に残酷で、そして何より、現実よりも現実感をもつ。
大衆小説よりは純文学、ポピュラー音楽よりはクラシックに似た趣。
観た後、世界が少し違って見える、そんな映画であった。
6月からライズXで再放映とのこと。DVD化を待ちきれなかったらまた見に行こう。
(公式サイト)
http://5cm.yahoo.co.jp/